ikeの日記

しがない研究者の雑記。

最近の出来事

今学期は忙しくブログの更新がなかなかできなった。
ということで最近あったことをまとめて書こうと思う。

MPSA

4月の第1週に、シカゴであったMidwest Political Science Associationの年次大会で報告してきた。
今回は無理やり締め切りを作ってサイドプロジェクトを進めることを目的として参加した。

学会1週間前に熱を出してその後喘息の症状が出たり、報告は相変わらず下手だったりどちらかというとつらいことが多い学会だったが、いろんな人に会って挨拶できたのは非常によかった。
学会で報告してもらえるコメントのクオリティは残念なことに概してそれほど高くないことを考えると、ネットワーキングは学会参加の重要な要素だと思う。

体調がよくなかったので基本的にホテルに籠っており特に観光はできなかったので、食べたものの写真でも。

f:id:ike_og:20190425175914j:plain

↑ Berghoffというドイツ料理レストランで食べたウィンナーシュニッツェル。ボリュームありすぎ 笑。

f:id:ike_og:20190425175933j:plain

オヘア空港の近くにあるミツワという日本食スーパーの食堂で。DCに戻る直前に行った。ちなみに店内には源吉兆庵まであった 笑。

f:id:ike_og:20190425175944j:plain

Nationals Park

野球を見るのが好きなのだが、今までナショナルズの試合をスタジアムで見る機会に恵まれなかった。
ただ、先日大学がイースターで休みの期間中たまたまデーゲームの日があったので、友人と観戦に行ってきた。

f:id:ike_og:20190425180901j:plain

ドームではないので観戦中かなり暑かったが、オープンな感じで雰囲気はよかった。
ナショナルズも勝ったし、非常に満足できた。また行きたい。

f:id:ike_og:20190425175956j:plain

↑ (小さいが)7回3分の2を1失点で抑えたナショナルズの先発コービン。ナショナルズはセットアッパーがパッとしないため、彼の好投はとても大きかった。

Asian PolMeth & SPSA

年明けから学会2つで報告をしてきた。

まずは1月5日~6日に京都で行われたAsian Political Methodology Meetingという政治学における計量分析方法論に関する学会でポスター報告をした。
名前から想像できるようにかなり小規模な学会なのだが、その道の専門家が多く参加していたため、いくつか有益なアドバイスをもらうことができた。
ポスターの位置が、人が来ない(というか気づかれにくい?)部屋のかつ隅だったのが恨めしいが…。

そして1月17日~19日にテキサス州オースティンで行われたSouthern Political Science Meetingで、単著と共著をそれぞれ1つずつ報告をした。
SPSAは政治学でもかなり「ゆるい」と評判(?)の学会で、自分が参加したパネルでもなかなかペーパーが共有されなかったり、ドタキャンする報告者がいたりと、何だかなと思うことも多かった。
ただ、特に単著の方はかなりよい討論者にあたったこともあり、個人的にはよい学会だったと思う。

今回は報告だけでなくいくつか収穫もあった。
まずはある程度ネットワーキングできたこと。京都でもオースティンでも、懐かしい人と話すことができただけでなく、いろいろな人と知り合うこともできた。
引っ込み思案な性格でなければ、よりこの機会を有効活用できたのかもしれないが…。

もう1つは、報告のやり方について勉強になったことだろう。
自分は報告が下手で、Asian PolMethのポスターでは「何が新しいの?」という質問を食らったり、SPSAの報告ではオーディエンスを見ないで話してしまったりと結構散々な出来だったわけだが、こうした点について指摘やアドバイスをもらえて非常にためになった。
また、他人の報告をいくつか見たことで、少なくともプレゼンにおいて「何をしてはいけないか」を知ることもできた。
今回得た経験を、次回以降に生かしていこうと思う。

ちなみに、学会に行く1つの楽しみは観光や食事である。
京都では時間がなかったが、オースティンでは観光とはいかなくても食事はそれなりに楽しむことができた。

f:id:ike_og:20190121211402j:plain

↑これはGus'sという南部風フライドチキンのレストランでの写真。それ以外は食べることに集中していたので写真は撮っていない 笑。

「統計的に有意」な差は見た目も「有意」か?

最近ツイッターで「回帰分断デザインのプロットで「有意」な処置効果があるように見えるにはt値はどの程度必要か?」というスレッドを見つけた。
結構面白いなあと思ったので、Rでシミュレーションを再現してみた。

以下がそのRコード。結構簡単。
なお、回帰分断プロットの作図やzスコアの算出にはrdrobustパッケージを利用した。

require(rdrobust)
set.seed(123)
N <- 2000 # number of observations
score <- c(1:2000) - 1000 # running variable
noise <- rnorm(2000)
par(mfrow = c(2, 2))
for (i in c(0.1, 0.3, 1, 2)){
  treatment <- ifelse(score < 0, 0, i)
  outcome <- treatment + noise
  rdplot(outcome, score, 
         title = paste0("z = ", format(rdrobust(outcome, score)$z[3]), digits = 3),
         x.label = "Score", y.label = "Outcome")
}

上記のコードでは、処置効果を大きくしていくことでzスコアを大きくするようにしてある。

さて、出力される図は以下のようになる。

f:id:ike_og:20181219225631p:plain

各プロットの上部に示されているzスコアを見ると、どのプロットにおいても処置効果の推定値は少なくとも10%水準では統計的に有意(左上のプロット以外は1%水準で有意)である。
しかし、図だけで判断すると、上2つのプロットでは処置効果の大きさに比べて従属変数のばらつきが大きいため、「統計的に有意でない」ように見える。
ツイッターで公開されている結果は若干誇張されているようにも思えるが、回帰分断デザインにおいて図を見ただけで処置効果が統計的に有意かどうかを判断するのは危険である、ということはいえるだろう。

しかし学会報告の準備や採点作業で忙しい折、こんなことしていていいのだろうか…。

投票参加は集合行為(!?)

最近自分の周りでは投票の話題が多い。理由の一つは、投票日が来週の火曜日に迫っている、中間選挙である。そしてもう一つ自分の大学に固有の事情として、大学院生労働者(TA・RA)の労働組合化の是非を問う院生投票が現在行われていることがある。

ところが自分は政治学研究者としては嘆かわしいことに、投票権のない前者のみならず、後者にも興味がわかない。
その理由としては、(i)自分が投票したところで結果は変わらない、かつ(ii)労働組合化のメリット・デメリットを調べて自分の意見を決めるのがおっくう、という点にある。

ここで面白いのは、自分が労働組会化について投票しない理由が、政治学における古典的な政治参加の議論に完全に合致している点である。
Riker and Ordeshook (1968)に代表される合理的選択論による議論では、投票参加は集合行為の一種と考えられる。つまり、社会全体としては有権者による投票参加が望ましいにもかかわらず、個人レベルではコストがその便益を上回るため、投票参加は「合理的」ではないのである。1

近年では投票参加を集合行為と捉える研究は減っているし、個人的には有権者の行動を合理的選択論を用いて説明することには否定的だ。
ただ、今回の件で投票参加についてはある程度(例えば選挙の特質によっては)合理的選択論的な説明もあってもいいという気がしてきた。2

もっとも、規範的にはいかなる選挙であっても権利がある限り投票をすることが望ましい。
今回自分はその規範から逸脱するが…。


  1. Riker and Ordeshook. 1968. “A Theory of the Calculus of Voting.” APSR 62(1): 25-42. かの有名なPr(Vote) = PB - C + Dという式を提示した論文である。

  2. Aldrich (1993)によると、投票参加はコストも便益も低く、これらのちょっとした変化で参加の確率が変化するため、集合行為ではない。ただ、選挙の性質によってそのコストは大きく変わるため、投票参加が集合行為である場合もあり得るだろう。Aldrich (1993). “Rational Choice and Turnout.” AJPS 37(1): 246-278.

APSA雑感

8月の終わりから9月の始めにかけて、American Political Science Association (APSA)の年次大会のためボストンへ行ってきた。

APSAは政治学ではおそらく2番目に大きな学会であり、報告の申し込みはかなり倍率が高いことで知られる。
授業で書いたサイドプロジェクトのペーパーを出したら何故かポスターで通ったため、報告のため今回初参加してきた。

行ってみた感想だが、個人的には若干失望したところがあった。
行く前は、倍率も高いことだし報告のレベルは全体に高いのだろうと考えていたが、実際には少なくとも平均的にはMidwest, Southernといった地域学会とそれほど大差はない印象を受けた。
報告者の数もかなり多いので、水準の高い報告もあったが、かなりレベルの低いペーパーも多々あった。

自分のポスター報告は、初日の昼だったこともあり、4人しか見に来なかった 笑。
ただ、それなりに納得できるコメントがもらえたのはよかったし、学内でもらえるコメントがかなりレベルが高いことも改めて認識できたので、そこそこ満足できた。

参加してみてもう1つ分かったことは、自分はやはり地域研究としてのアメリカ政治ではなく、比較政治や政治学一般に興味があることである。
今回ある程度パネルを見に行ってみたが、自分が興味を持ったのはいわゆる"Americanist"的なパネルではなく、世論研究や政治心理学一般のパネルだった。
アメリカ政治を対象としていても、自分としては得られた結果の一般化可能性に注意が払われていない研究は面白いとは思えなかった。
こんなこと今頃わかっている時点で問題だが…。
せっかくなので、今後はより自分の興味がある方向性で自分をラベリングしていければと思う。

ということで、パネルの水準には不満はあったが、そこそこ学びがあったとはいえるだろう。
会いたいと思っていた人たちにも結構挨拶できたこともよかった。
結論としては、そこそこ満足できた、といったところだろうか。

ちなみに行く前には結構観光できるのではないかと期待していたが、結局ほとんどそのための時間は取れなかった。
お土産も結局地下鉄のチケットだけ…笑 ↓

f:id:ike_og:20180912171828j:plain

ガンマ分布と逆ガンマ分布

ブログに数式とコードを書く方法を学習したので、備忘録代わりに。

shape parameterが \alpha、scale parameterが \betaのガンマ分布の確率密度関数


f(x|\alpha, \beta) = \frac{1}{\Gamma(\alpha)\beta^{\alpha}} x^{\alpha - 1} \exp(-\frac{x}{\beta})

一方shape parameterが \alpha、scale parameterが \betaの逆ガンマ分布の確率密度関数


g(x|\alpha, \beta) = \frac{\beta^{\alpha}}{\Gamma(\alpha)} x^{-\alpha - 1} \exp(-\frac{\beta}{x})

ここで y = 1/xとおいて確率変数の変換公式を適用すると、


\begin{aligned}
f(x|\alpha, \beta) &= \frac{1}{\Gamma(\alpha)\beta^ {\alpha}} x^ {\alpha - 1} \exp(-\frac{x}{\beta})  \\
&= \frac{1}{\Gamma(\alpha)\beta^ {\alpha}} \frac{1}{y}^ {\alpha - 1} \exp(-\frac{1}{\beta y}) \frac{1}{y^ 2}  \\
&= \frac{1}{\Gamma(\alpha)\beta^ {\alpha}} y^ {-\alpha - 1} \exp(-\frac{1}{\beta y})  \notag \\
&= g(y|\alpha, \beta^ {-1}) \notag
\end{aligned}

よって、例えばRのrgamma()関数を使ってshape parameterが5、scale parameterが0.1の逆ガンマ分布から乱数を発生させたい場合には、

x <- 1/rgamma(n = 100, shape = 5, scale = 10)
# or
x <- 1/rgamma(n = 100, shape = 5, rate = 0.1)

という様にscale parameterをrate parameterに置き換えないといけない。

いつもコードを書くときにわからなくなって数時間無駄にするので、メモ。

7月に読んだ本

本にだけに限ってリスト化するのもおかしいけど、メモ。

  • Mason, Liliana. 2018. Uncivil Agreement; How Politics Became Our Identity. University of Chicago Press.
  • Klar, Samara & Yanna Krupnikov. 2016. Independent Politics: How American Distain for Parties Leads to Political Inaction. Cambridge University Press.
  • Ellis, Christopher & James Stimson. 2012. Ideology in America Cambridge University Press.
  • Kriner, Douglas L. & Andrew Reeves. 2015. The Particularistic President: Executive Branch Politics and Political Inequality. Cambridge Universiy Press.
  • Kevin, Arceneaux & Martin Johnson. 2013. Changing Minds or Changing Channels? Partisan News in an Age of Choice. University of Chicago Press.
  • Rosenstone, Steven & John Mark Hansen. 1993. Mobilization, Participation, and Democracy in America. MacMillan.
  • Rudalevige, Andrew. 2002. Managing the Presidents Program: Presidential Leadership and Legislative Policy Formulation. Princeton University Press.
  • Imai, Kosuke. 2017. Quantitative Social Science: An Introduction. Princeton University Press.

Compの準備中としてはやや少ないが、帰省や引っ越しがあったことを考えるとやむを得ないか。

Imai(2017)はTAの準備として読んだのだが、randomization inferenceやstatistical powerについてわかりやすく書いてあり、自分のためにもなってよかった。